著作権教室
著作権は「形の無いもの」を独占できる権利で、知的財産権の1つです。
ここでは、絵画作品を例に、「形の有るもの」を独占できる権利(所有権)と著作権との違いを説明させていただきます。
1.著作権と所有権の違い
貴方の部屋に飾られている絵画はプレゼントされたものですか?購入したものですか?
いずれにしても、その絵の「所有権」は、プレゼント又は購入された貴方のものです。
でも「著作権」は貴方のものでなく、特別な契約がない限り「作者(著作者)」のものなのです。
絵の「所有権」を有する貴方は、その絵を他者にプレゼントしたり売ったりすることはできます。でも「著作権」は有していないので、その絵を利用する際には作者の許諾が必要となります。「利用」とは、その絵をコピーし、挿絵にしたり、インターネットで公開したりすることです。
ですから、許可なく他者の絵を挿絵として利用した場合、著作権侵害で訴えられる危険性があります。
「この絵は私が描いたもの」という場合は、絵の「所有権」も「著作権」も貴方のものです。ですから、その絵を他者にプレゼントすること(所有権の移転)も、その絵をコピーしたりインターネットで公開したりすることも自由。
絵を他者にプレゼントしてしまった後でも、その絵の著作権が貴方のもとにある場合は、ご自身の絵を利用することができます。つまり、プレゼントする前に撮影した絵を、挿絵に使ったり、インターネットで公開することができるのです。その絵を勝手に利用した人を、裁判で訴えることだって可能です(著作権の行使)。
逆に、絵をご自身のもとに置いたまま(絵の所有権を移転させることなく)、その絵を利用する権利のみ、他者に譲り渡すこともできます(著作権の譲渡)。
つまり、絵画という形のあるモノを独占できる権利が「所有権」、「絵画を利用する」という形のないもの(コト)を独占できる権利が「著作権」なのです。
2.「著作権」とは?
「著作権」とは、「著作物を他者が勝手に利用するのを防止できる権利(自身の作品を他者が利用する際に料金を取ることが可能な権利)ですので、著作権は「財産権」の一種。
そして、著作権の対象となるのは、文芸・学術・美術・音楽など、人間の「知的」な活動によって創造されたもの(著作物)。
これらの著作物は、コピー(又は模写)したり、外国語などに翻訳したり、上演したり、演奏したり、放送したり、インターネットで公開したりすることで、多くの人に利用され、文化が発展します。これが「著作権が知的財産権の一種」であることの理由なのです。
一方で、著作権は「著作者の気持ちが尊重される権利」でもあります(著作者人格権)。
つまり、著作権は、「財産権」と「人格権」という2つの要素を持つ権利なのです。
人格権としての「著作権」によって、「自身の作品をみだりに改変されたくない」「自身の作品を公表したい(したくない)」「作者名として自身の名前を表示したい(されたくない)」といった作者の気持ちが尊重されるのです。
当サイトは、著作権の財産権的な側面よりもむしろ「人格的側面」を重視したサイトですので、作者の気持ちを尊重しつつ、マナーを守ってご利用頂けることを期待しております。
3.財産権としての「著作権」に含まれる権利
著作権とは「著作物を他者が勝手に利用するのを防止するための権利」でしたが、「著作物の利用」には、著作物の種類に応じて、様々な態様があります。
コピーしたり、模写したり、上演したり、演奏したり、上映したり、放送したりインターネットにアップロードしたり、口述したり、展示したり、頒布したり、譲渡したり、貸与したり、外国語に翻訳したり、編曲や変形したり・・・といったように。
著作権法では、著作物の利用態様ごとに、複製権(第21条)、上演権及び演奏権(第22条)、上映権(第22条の2)、公衆送信権(第23条)、口述権(第24条)、展示権(第25条)、頒布権(第26条)、譲渡権(第26条の2)、貸与権(第26条の3)、翻訳権・翻案権等(第27条)の権利を著作者に認めております。
そして、原作品を利用して作られた二次的著作物については、二次的著作物の著作者に認めたものと同一の権利を、原作品の著作者が得ることができるのです(第28条)。
このような様々な権利(支分権)の束が著作権なのです。
4.「著作権の譲渡」とは?
著作権は財産権の一種ですので、他者に譲渡することができます。
譲渡の仕方としては、著作権法第61条に「著作権はその全部又は一部を譲渡することができる。」と規定されるように、複製権(第21条)、公衆送信権(第23条)…などの支分権ごとに譲渡する場合(著作権の一部を譲渡)と、支分権の束を一括して譲渡する場合(著作権の全部を譲渡)とがあります。「著作権の譲渡」と言われる場合、この全部譲渡を意味します(但し、第27条・第28条については特掲が必要です)。
つまり、勝手にコピーされるのを防止する権利、コピーしたものを勝手に販売することを防止する権利、勝手にインターネットにアップロードすることを防止する権利…などをまとめて譲渡することが「著作権の譲渡」なのです
5.「著作権の譲渡」と「所有権の譲渡」の違い
「著作権の譲渡」は、「著作物を他者が勝手に利用するのを防止するための権利」を譲渡することですから、作品そのものの譲渡(所有権の譲渡)とは異なります。
ですから、著作権を譲渡しても、貴方の絵が貴方のものであることに変わりないのです。絵の所有権は依然として貴方のもとに在りますので、その絵を他者にプレゼントすることも、販売することも、処分することも、全く貴方の自由なのです(但し、プレゼントする場合などは、「著作権は既に譲渡済み」ということを伝えておくのが適切でしょう)。
著作権を譲渡する際に注意して頂きたい点がございます。
それは、著作権を譲渡してしまったら、自身の絵を利用するとができなくなってしまう場合がある、ということです。
また、既に譲渡していることを忘れて、二重に譲渡してしまう、というトラブルもよく聞きますので、「著作権の譲渡」はくれぐれもご慎重にお願いします。
6.「バーチャル公募展」に応募するには…
当サイトの「バーチャル公募展」は、①著作者人格権(ご自身の作品の利用のされ方を作者が指定すること)を明示することと、②作品のコピー(画像データ)に関わる著作権を弊社に譲渡していただくこと、が応募の条件となっています。
作品の「コピー」に関わる著作権を譲渡していただくことの理由は、「原作品に関わる著作権」が応募者のもとに留められるようにするためです。これは作者(応募者)にとってのメリット。
そして、利用者にとってもメリットとなるように、作品(=コピー)に関わる著作権を弊社に譲渡していただくことで、当サイトに展示されている全ての作品を利用する際の著作権処理(利用許諾)を不要とするためです。
つまり、「営利、非営利を問わす利用可能」と明示することで、商業目的での利用を含め、あらゆる場合に、許可を得ることなく使用することができる反面で、作者の思いに沿った(マナーのある)利用の仕方をして頂きたい、との思いから、このような手法を採らせていただきました。
先ほど、「著作権を譲渡する際には慎重に」と申し上げましたが、このような弊社の思いをご理解いただいた上で「バーチャル公募展」にご出品下さい。貴方の作品が多くの人に役立てられますように・・・。
7.「バーチャル公募展」に応募すると…
絵画そのものが処分されてしまっても、弊社に譲渡していただいた著作権は、作者の死後70年(変名で公表した場合は公表後70年)存続します。
つまり、絵そのものが無くなってしまっても、貴方の作品は生き続け、挿絵として利用され続け、そして著作権が消滅した頃には、貴方の作品は「多くの人の心の中で生き続けるフォークロア」となっていることでしょう。
8.他のサイトの著作物を利用する際の注意点
当サイトとは異なるWEBサイト上で「著作権フリー」と表示されている作品(素材)には、「商業目的での利用は不可」と表示されている場合が多々あります。このような表示を見て、「商業目的ってどのような範囲?」「宣伝目的はNGなの?」などと悩んでしまうことはありませんか?
サイトによって著作物の利用条件は微妙に異なりますので、同様のサービスを行う他のサイトで著作物を利用される場合は、必ず利用条件をお読み下さい。そして、少しでも不安を感じた場合は、サイト運営者に確認されることをお勧め致します。
以上、著作権の話をさせていただきましたが、ご理解いただけたでしょうか?
9.著作権ドラマ
「よく解らなかったわ!」とおっしゃる方のために、著作権ドラマ*」をお送りします。
著作権ドラマ 「=第1章= 私の詩が真似された!」
著作権ドラマ 「=第2章= みんな著作権者」
著作権ドラマ 「=第3章= 学園祭」
→著作権ドラマを見る。
著作権ドラマの内容を紹介します。
=第1章=私の詩が真似された!
内容:著作権(①著作者人格権、②財産権としての著作権)の概要を説明しております。
学校の授業で使用する場合のご提案:「自信作なのに名前が公表されなかったら、どんな気持ちになりますか?」、「自分の詩が改変されたらどのような気持ちになりますか?」などと、生徒に問いかけながら、授業を進めましょう。
=第2章= みんな著作権者
内容:著作物の種類を例示しております。
学校の授業で使用する場合のご提案:作詞家志望の夢子、歌手志望の歌子、漫画家志望のオサム、映画監督志望のトシオ、科学者志望のヒロシ、サラリーマン志望のケンタ、そしてケンタが片思いするしずか、と様々なキャラクターが登場します。「あなたはどのタイプ?」と質問してみるのもおもしろいですよ。
=第3章= 学園祭
内容:学園祭で自主制作の映画を放映する際に考えなければならない著作権問題を取り上げました。
学校の授業で使用する場合のご提案:映画は、文芸・美術・音楽など様々な著作物の集まりであり、他者の著作物を利用して作成されるケースが多いものです。このような二次的著作物について、「原作品を利用する際のマナーを身につけることができればミリオンセラーも夢ではない。」と、将来への大きな夢を与えてあげて下さい。
では、ドラマを楽しみながら、著作権について学んでいきましょう!
(著作権の存続期間がドラマ制作時のもの(50年)となっています。「70年」と読み替えて下さい。)
→著作権ドラマを見る。
*著作権ドラマとは、実生活の中で起こり得る著作権問題に目を向けさせるために、等身大の高校生を登場人物とするドラマ仕立ての著作権授業です。この著作権ドラマは、2008年に茨城県の高校で行われた知的財産出張授業**のために私が書き下ろした「著作権授業用台本(原稿)」をベースに作成しました。
**知的財産出張授業とは、日本弁理士会関東支部の学校教育支援委員会(当時)において行われているもので、委員会所属の弁理士(有志)が、学校からの依頼に応じ、学校に出向いて知的財産権授業を行うものです。